リスク許容度にもよりますが、ナンピンを採用すれば、
バックテスト上は絶対に負けないEAを作成することはできます。

絶対に負けない“という表現は語弊があるかもしれませんが、
要するに、ナンピンした時のトータルのポジションで、
プラスに終えるようにすることは可能です。

例えば、
100PIPSの含み損を抱えたタイミングで
追加でポジションを取り(ナンピン)、
トータルのポジションで僅かでも含み益になれば
利確するロジックのEAだとします。

あるタイミングで1ロット分ロングポジションを持ちます。

しかし、チャートは下がり続け、100PIPS下落したので
ここで1ロット分ロングポジションを追加で持ちます(1ナンピン)

しかし、さらにチャートは下がり続け、
ナンピンした位置からさらに100PIPS下落したので、
ここでさらに1ロット分ロングポジションを追加で持ちます(2ナンピン)

しかし、さらにチャートは下がり続け、
ナンピンした位置からさらに100PIPS下落したので、
ここでさらに1ロット分ロングポジションを追加で持ちます(3ナンピン)

上記では合計で4ロット分ポジションを持つことになりますが、
この4つのポジションのトータルの損益が
僅かでもプラスになっていれば、まとめて決済します。
chart20050501

ナンピンを繰り返せば平均購買値がどんどん下がっていくので、
損益分岐点も下がり、利確しやすくなりますが、
こんな都合の良い相場環境だけとは限りません。

通常とは異なる一方的なトレンドが発生し、
それに対してナンピンで立ち向かってしまった場合は悲惨です。

4ロットでは到底収まらず、
永遠にナンピンを繰り返すことになってしまう危険性もありますが、
現実問題としては、永遠にナンピンすることはできません。

ポジションを増やせば増やすほど含み損の蓄積が大きくなり、
それに比例して、資金の減少スピードも加速度的に大きくなり、
知らないうちに証拠金維持率を下回ってしまい、
強制決済させられてしまうでしょう。
chart20050502

その場合でも、キチンと強制決済してくれたら良いんですが、
システムが脆弱だった場合、スリッページが大きくなって、
想定以上の損失が発生する可能性もありますし、
下手をすると、預けていた証拠金以上の損失を被り、
借金を背負わされる危険性すらもあります。

理想(バックテスト)と現実(リアルトレード)は異なります。

バックテストでパラメーターを弄り(数字遊び)、
絶対に破綻しないEAを開発したとしても、
未知のチャートでも永遠に破綻しないわけではないです。

コロナショックとナンピンEA

通常の相場状況であれば、
ナンピンEAはほとんど負けないでしょう。

通常のレンジ相場と通常のトレンド相場であれば、
ナンピンしていれば対応できます。

しかし、イレギュラーな相場状況に変化した場合、
ナンピンEAは一気に危険度が上がります。

最近では、コロナショックですね。

既にご存じだと思いますが、今回のコロナショックで、
為替市場は超高ボラティリティー相場に豹変しました。

想定以上に一方的なトレンドになる
過去にも例を見ないほどのイレギュラーな相場に変わったわけです。

私はコロナショック以前から高ボラティリティー相場での
ナンピンEAの危険性を説いていましたが、
今回のコロナショックでは、
多くのナンピンEAが超高ボラティリティー相場に対応できず、
一気に資産を減らす光景を目の当たりにしました。

以下、例です。

最近ではEA(自動売買)もメジャーになってきたようで、
多くのFX系サイトで取り上げられるようになってきました。

私も時々チェックしてますが、
なぜかナンピン系は人気がありますね。

しかし、以下のグラフの推移を見れば、
ナンピンの怖さを実感するのではないでしょうか。

もちろん、どこのサイトなのか、どのEAなのか、
個別を特定するような情報は載せません。
(メールで質問されてもお答えできません)

ナンピンEAサンプル1
nanpin20050503

ナンピンEAサンプル2
nanpin20050504

ナンピンEAサンプル3
nanpin20050505

ここでは3例掲載しましたが、
コロナショックでナンピンEAの多くが
このような状況に陥りました。

去年までの低ボラ相場でコツコツと資金を増やしていきましたが、
コロナショックで資産が一気に減少、
中には破産した口座もあります。

数年間コツコツと資金を増やしたとしても
たった1回の想定外のトレンドで全てを失ったわけです。

これが現実です。

もしも、私がこれらナンピンEAを稼働していたとしたら、
、、、ゾッとします、、、

もちろん、ナンピンEAの全てが
このような状況になったわけではないですよ。

中には、コロナショックでもなんとか生還できた
ナンピンEAも存在します。

しかし、そのようなEAは、
ただただ運が良かっただけと思ったほうが良いです。

各ナンピンEAのロジックが分からないので何とも言えないですが、
おそらくパラメーターの数値が少し違っただけで、
上記グラフのように破産していた可能性もあります。

さて、、、これだけ説明しても、それでも、、、
どうしても、、、どうしても、、、
誰が何と言おうとも、どうしてもナンピンしたいのなら、
1回の負けで資金のほとんどを失わないように、
リスク許容度を小さくしたうえで運用しましょう。

負けたくないと思うほど、負けた時に一気に失います。

ほとんど負けない、しかも、損切り幅は小さい、
そんな魔法のようなEAは存在しません。

今回のコロナショックが良い教訓になってくれれば良いんですが。